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大阪高等裁判所 昭和62年(行コ)47号 判決 1988年6月23日

神戸市兵庫区会下山町三丁目一四五番地の九

控訴人

共同株式会社

右代表者代表取締役

岡田文恵

右訴訟代理人弁護士

山下更一

同市同区水木通二丁目一番四号

被控訴人

兵庫税務署長

山川忠利

右指定代理人

田中慎治

佐治隆夫

井上正雄

阿瀬薫

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  当事者の求めた裁判

1  控訴の趣旨

(一)  原判決を取消す。

(二)  被控訴人が昭和五七年五月二一日付で控訴人の昭和五四事業年度の法人税についてした更正及び過少申告加算税賦課決定の各処分のうち所得金額五九万五五四二円、税額〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定の全部を取消す。

(三)  被控訴人が同日付で控訴人の昭和五五事業年度の法人税についてした更正及び過少申告加算税賦課決定の各処分のうち所得金額一一五六万〇三九四円、税額〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定の全部を取消す。

(四)  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

2  控訴の趣旨に対する答弁

主文同旨

二  当事者の主張

次のとおり付加するほか、原判決の事実適示と同一であるから、これを引用する。

(当審における新たな主張)

1  控訴人

岡田及び岡田縫製株式会社は、株式会社岡田羅沙店、神戸洋服株式会社が神戸市中央区相生町に所有する不動産を占拠していたが、控訴人が岡田に一億円を支払うことにより、右不動産を明渡した。岡田らは、右占拠中、賃料等をほとんど支払わず、そのため、所有者の収入はなく、赤字経営であつたが、右明渡し後は、他に賃貸するなどして賃料を得、法人税を納付できるようになつた。以上のような収益を得ることができるようになつたのは、岡田らが前記各不動産の立退きに応じたからであつて、形式的には、当事者がそれぞれ異なるものの、控訴人、岡田羅沙店は文恵が、神戸洋服は耕平がそれぞれ代表者であること、いずれもが同族会社であること等を考えれば、実質的にみて、一億円の支払が右のような収益をあげる費用になつたのは間違いなく、この点からみても、右一億円の支払が損金算入と同様の評価を受けるべきである。

2  被控訴人

控訴人の右主張は争う。相生町の不動産の所有者はあくまでも右岡田羅沙店及び神戸洋服であり、その所有者でない控訴人が、占拠者に対し、立退料を負担すべき理由はなく、立退料として損金の額に算入されないのは当然である。

三  証拠

原審及び当審の訴訟記録中の各証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求は棄却すべきものと判断するものであるが、その理由は、次のとおり補正するほか、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。

(原判決説示部分の付加、訂正)

1  原判決一二枚目表末行目の「原告代表者本人尋問の結果」を「原審及び当審における控訴人代表者本人尋問の結果」と、同裏二行目の「昭和三四年に結婚した」を「昭和三四年一一月一四日に正光と結婚した」と、同四行目の「昭和三六年退任してその代り」を「昭和三五年六月二三日退任して、翌三六年六月五日」と各訂正し、同一三枚目表七行目の「神戸洋服株式会社」の前に「耕平が代表取締役をしていた」を、同裏一一行目の「右合意に従つて、」の次に「昭和五四年四月一八日」をそれぞれ付加する。

2  同一五枚目表六行目の「原告代表者」の前に「原審及び当審における」を、同七行目の「第一五号証」の次に「当審における控訴人代表者本人尋問の結果」を各付加し、同九行目、同裏八行目の各「作成日付の当時」「作成日付である昭和三八年七月三一日当時」と、同裏初行の「偽造のもの」を「内容虚像の偽造文書」と、同三、四行目の「原告本人尋問」を「原審における控訴人代表者本人尋問」と各訂正する。

3  同一六枚目表初行の「山田」を「山田敬三」と、同五行目の「乙第四号証」を「乙第三、四号証」と、同六行目の「乙第三号証、第九」を「乙第九」と、同裏七、八行目の「商法第二五四条にも違反する虞れがある」を「商法第二五四条三項、第二五四条ノ三の趣旨に反し、容認し難い」と、同一七枚目表五行目の「この事実によると」以下同六行目の「認められる」までを「これらの事実関係からすると、岡田は本件不動産の管理業務を行つていないと認めるのが相当である」と各訂正する。

4  同一七枚目裏四行目の「前示各認定の」以下同一一行目までを「前示各認定の事実からすると、措信できない。なお、控訴人は、関兼建設が岡田に支払つた前示四五〇〇万円につき、被控訴人が管理費用と認めているのに、本件五〇〇〇万円についてこれを管理費用と認めないのは納得がいかない旨主張するが、被控訴人が右四五〇〇万円を管理費用と認めたからといつて、前記認定を左右するものではない。」と訂正する。

(当審における新たな主張に対する判断)

控訴人は、控訴人の岡田に対する一億円の支払により、岡田縫製株式会社が株式会社岡田羅沙店及び神戸洋服株式会社の所有する神戸市中央区相生町所在の不動産を明渡し、そのために右不動産を他に賃貸して利益を得られるようになつたのであるから、右一億円の支払は損金算入と同様の評価を受けるべきであり、しかも、控訴人及び株式会社岡田羅沙店は文恵が、神戸洋服株式会社は耕平がいずれも代表者であつて、同族会社であることからすれば、なおさらである旨主張するところ、原本の存在及び成立に争いのない乙第二〇号証の一ないし四、第二一ないし第二三号証によれば、相生町の右不動産の所有者は株式会社岡田羅沙店及び神戸洋服株式会社であつて、控訴人は、その所有者でもなければまた賃貸人でもないことが認められるから、右控訴人が岡田及び岡田縫製株式会社に支払う、立退料を負担すべき理由はなく、したがつて立退料として損金の額に算入されないのは当然であり、このことは、控訴人及び株式会社岡田羅沙店は文恵が、神戸洋服株式会社は耕平がいずれも代表者であるとか、右各会社が同族会社であつても同様であり、控訴人の右主張は失当であるといわなければならない。

二  そうすれば、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法九五条、八九条に従い、主文の通り判決する。

(裁判長裁判官 後藤勇 裁判官 高橋史朗 裁判官 横山秀憲)

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